那覇から飛行機ならわずか1時間5分。それをわざわざ13時間もかけ、沖縄本島から南北大東島へ行く船旅が、意外な人気だという。
その秘密は大東島への上陸方法にある。テレビでその様子が紹介されるや、島旅愛好家の心に火をつけた。ここでは乗客は大きなケージに入れられ、船の上からクレーンで吊り上げられて島に上陸する。まるで貨物扱いの、このクレーン上陸を体験したいと、船に揺られてやってくる観光客が増えている。
水深2000メートルの海の底から突き出た2本のサンゴの柱、それが南北大東島だ。だからこの島には砂浜がない。島の周囲はどこも切り立った断崖で、少し沖に出ればすぐにドカンと深くなる。大海のうねりが島にもろにぶつかり、海の深さのために船を接岸する港をつくることができないのだ。
那覇からの貨客船「だいとう」は、その日の風向きでもっとも波の少ない港に入港する。港で待っているのは、見上げるほどの高さのクレーンだ。島の人々が生きていく上で欠かせないすべてのもの(ガソリンやプロパンガスから建材、自動車、食料品などなど)も、すべてこの船で運ばれて、クレーンで吊り上げられ島の人々の手に渡る。
乗客が実際にクレーンで吊り上げられる時間はあっという間だ。だがこうやって上陸してみると、この島がわずか100年前まで無人島だったという事実に、少し近づいたような気がする。 はるかな絶海の孤島への船旅には、想像以上のおもしろさがある。
撮影・垂水健吾