沖縄には、普段私たちが使っているカレンダーとは違う時間で進む暦がある。それはだいたい普通の暦の1カ月遅れくらいでやってくる。いわゆる旧暦というものだ。
年配の方のなかには、旧暦になじみのある方も多いだろう。明治5年、政府が出した「改暦の詔書」によって太陽暦(新暦)に変わるまで、日本で普通に使われていた暦が旧暦、正確には太陰太陽暦といわれるものだ。
もちろん沖縄も、仕事や学校など日常生活の大半は新暦で行われる。だが、お盆をはじめ伝統行事は、今も旧暦で行われることが多い。沖縄の人にいわせると「沖縄県民として生活していくのには新暦で十分。でも、ウチナーンチュとして生活するには旧暦が必要」ということらしい。
とくに漁業の町、糸満市では旧暦が広く使われている。休みの関係から、お正月は新暦のところが圧倒的に多い沖縄のなかで、糸満だけは旧正月を守っている。糸満のウミンチュ(漁師)は、「新暦の日付を忘れることはあっても、旧暦を忘れたら漁はできない」と言う。それは、旧暦が潮と大きく関係しているからだ。
なぜ沖縄には旧暦が残っているのだろうか。暮らしに根づいた沖縄独特の行事を新暦に変えても、とくにメリットがないから、という説もあるが、「旧暦には身体感覚に合った季節感がある」というのが実感のようだ。
月の満ち欠けで日を数える旧暦には、自然とともに生きてきた沖縄の時間が流れている。
撮影・垂水健吾